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:: 幸福の時間






あれから1年が経ちました。








時間は午前10時。
昨日は夜遅くまで作業をしていたので、若干寝坊してしまった。
正確には、若干ニ度寝してしまった。
電車の時間がヤバい。

急いで身支度を整え、座布団の上で寝ている愛犬ミルの頭をなでる。


コロ「ミル、行ってきます」


ミル「……フー(鼻息)」


溜息をつかれた。
OK、安眠妨害して悪かった。




電車に乗り込み、座席に座る。
あ〜やばい、眠い。完全に寝不足だ。
着くまで寝てようかな、と思い、僕は眼を閉じる。




いや、待て。
今日は札幌で降りるわけじゃないんだから、寝たらマズい。
ちゃんと起きていよう。
僕は重いまぶたを上げ、窓の外に眼を向ける。

コロ「………」

眼前に広がるのは、眼を閉じる前とは明らかに違う景色。
状況を整理しようと試みる僕の耳に、車掌のアナウンスが聞こえてくる。

『次は〜○○駅〜、○○駅〜。降り口は〜左側です』

読み上げられたのは、乗車した駅から4つほど先の駅。
どうやらあの一瞬でぐっすり寝ていたらしい。
気分はワープだ。

『この列車は〜小樽行き区間快速列車でございます』

区間快速…ってことは、小さな駅は止まらないんだな。
次で乗り換えしなきゃダメか。


『○○の次は〜札幌です』


札幌までの全駅すっ飛ばしたっ!!!?



『あっ、失礼しました。○○の次は〜□□です』


ビックリしたよ。
おかげで目が覚めたよ。

乗り換えのため、僕は途中の駅で下車。
次の電車を待つ。




大松「おっ、コロじゃん!」

コロ「よう、おはよう」

大松「なんでこの駅にいるの!?」

コロ「ん〜、区間快速だったから、乗り換え。田舎はいろいろ大変なのです」


駅の改札にいたのは、かつての8組のクラスメイト大松くん。
まぁ、時間的にいるだろうなとは思っていたので、特別驚きもない。


大松「そうそう聞いて! オレさ、昨日の朝からほとんどメシ喰ってないんだけどさ」

コロ「食えよ!」

大松「いやそれでさ、オレ体重72?キロくらいあったじゃん」

コロ「いや知らないし」

大松「あったんだよ! それで今朝体重測ったら、60キロ代まで減ってたんだよ!!!


世のダイエット戦士が聞いたら発狂しそうなカミングアウト。
相変わらず朝からテンション高いなぁ。




10分後、目的地近くの駅に到着。
僕と大松くんは待ち合わせの11時まで駅で待機していた。

…のだが、誰も来ない。
ん〜、きちんと出席とったわけじゃないからなぁ。


コロ「……時間も時間だし、先に行ってるか。みんな現地に直に来るのかもしれないし」

大松「そうすっか」


そう言って歩き出す大松くん。
僕も後を追おうとした、その時。




「あっ、大松くん!!?」




改札口の方から聞こえてくる、聞き覚えのある女性の声。
振り向いた先にいたのは…


大松「あっ! ノッキー!」

コロ「野木! …と………」


野木くんと、声の主である見覚えの無い女性。
………真剣に誰だ?

誰だか思い出せないまま、一行は目的地へ歩き始める。
や〜、久しぶり〜、と言う声にはもの凄く聞き覚えがあるのだが…………………………あっ!


コロ「笹森さん、スゴい久しぶりだね。丸1年くらい会ってなかったか」

笹森「コロくん元気だったぁ?」

コロ「とりあえずさっき改札で僕が全く呼ばれなかったことが軽くショックだった」

笹森「やっ、ゴメッ、そうじゃなくて! 大松くんが外に出て行きそうだったから呼んだんだよ!」

コロ「いやいや、ジョークだって。気にしないで」





や〜、なんか懐かしいなぁ。この空気。
みんなでテクテクと道を歩きながら、くだらない話で腹を抱えて笑って…それは1年前と全く変わらない光景。
丸1年の空白があっても、それは変わらない。


そう、僕らが高校を卒業してから、丸1年が経った。


あれから僕はデザイン系の大学に進学した。
入学後すぐ、新しい友人たちと共に「デザインサークル」を設立。
まぁ、模擬デザイン事務所といったところか。
部員は今や20人を超え、最近では企業からも仕事の依頼が来るようになってきた。
部長である僕は、制作に営業、運営と、目の回るような毎日を送っている。

更に言うと、次年度の大学祭実行委員会の重役にも就任してしまった。
ホントに死ぬかもしれない。



野木くんは看護系に進学。
看護実習の時の担当教員が、もの凄い美人でウハウハだったと嬉しそうに語っていた。
彼も学祭の実行委員会をやっているらしい。


笹森さんは、久しぶりに会ったせいか、すごく大人っぽくなっていた。
…が、喋ってみると全く変わっていない。
大松くんとエロトークでバリバリ盛り上がるあたり、何も変わっていない。


大松くんは、大学でロボットとかプログラムの研究に明け暮れているらしい。
サークルの部室に住み着いていたり、深夜3時に大学に忍び込んだりと、相変わらず大暴れの毎日だ。




みんな変わってない。
どんなに久しぶりに会っても、まるで1年前に戻ったような感覚になれる。
あの最高に楽しかった時と同じように、心の底から笑い合えた。



でも、変わりゆくものもある。

例えば、僕を取り巻く環境や立場、毎日の忙しさ。
例えば、卒業後ほとんど連絡のとれない、噂すら聞こえてこないクラスメート。
例えば、本州へ進学した横山くんや志村くんたちがこの場に来れないこと。



そして、僕ら8組の担任だった、コヒ先生の転勤が決定したこと。



今日は、先生の離任式だ。





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:: 1年間の進退


雪が降り始めた。

天気予報を見た感じ、そろそろ本格的に冬がやってきそうだ。



明日はサークルのミーティングで…あ、英語の宿題やってないな。
ポスターの締め切りが12月1日で…課題の締め切りもたしかその辺だったよな。

僕は大学での作業を終え、駅のホームで電車を待つ間、ぼんやりとこれからの予定を整理していた。
そのせいで、すぐ横から聞こえてくる声になかなか気付くことができなかった。



…んぱい。コロ先輩。コロ先輩」

コロ「はい?」



ようやく自分が呼ばれていることに気づき、あわてて振り返る。
「どうも」と短く挨拶をしてきたのは……


コロ「…………うわっ!!? 中井ぃ!!?」


予想外の珍客に、思わず声を上げるコロ。

中井は僕の中学時の後輩で、大変な変人である。
現在は高校3年で受験生まっしぐら。
そして「頭の良い人は変人」の法則通り、とても頭が良い。
どれくらい良いのかというと、志望校が東大なくらい。



ずいぶんと久しぶりに会ったため、互いの近況報告だけでも話は続く続く。


コロ「あ〜そっか。もうすぐセンターの時期か」

中井「ですねぇ。たしかあと58日くらいです」


懐かしいねぇセンター試験。
大学入ってからは、5教科は英語としか縁がないからなぁ。
もうね、数学とか化学とかは見たくないです。



中井「そういえば最近、東大模試受けたんですよ」

コロ「へ〜」

中井「見ます?」

コロ「いや、いい」

中井「…そうですか」


開きかけたカバンを閉める中井。


中井「模試、全然出来なかったんですよねぇ。5割しかとれませんでした」

コロ「まぁ、東大だしね。そんなもんじゃないの?」




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:: 相変わらずの人々

お久しぶりです。
コロです。

今日は我が母校の学校祭に行ってきましたので、軽く報告。



卒業時と変わらぬ母校。
美術部の後輩たちが作ったアーチを抜けると、クラスごとに制作した色とりどりのステンドグラス(カラーセロファン)が迎えてくれた。
懐かしいなこの光景。


かつてのクラスメイトたちにも遭遇。

再会の喜びもつかの間、太田さんは1人だけいつの間にか居なくなるし、大松くんは人ごみの中を全力疾走で駆け抜けて行くし、野木くんはスーツ姿で来るし。
相変わらずお元気でしたよみんな。


あと、去年僕らが制作したステンドグラスがまだ飾られていました。
……保存状態がスゴく悪くて、見る影も無いくらいボロボロになってましたが。


そして大松くんと校内をうろついていると、なんと伝説の教師、佐久米先生を発見。
現在は1年8組、つまり僕ら理数科の後輩たちの担任をしているとのお話。
8組の後輩たちよ、ガンバレ。

さて、その佐久米先生はといえば、なにやらガラス戸の前に立って外を眺めている。
勇気を出して話しかけてみた。


大松「先生!」

佐久米先生「…オレ今全力で仕事中だから」







…………………………。







大松「……すみません」

コロ「すみません」



その後、佐久米先生に会うことはなかった。